●交通事情〜タクシー編

 さて、このようなタフな歩行者たちにも驚くが、実はそれ以上にタフなのが自動車である。万が一事故が起こった場合、最後に「勝つ」のがどちらなのか考えれば、その理由はよく分かる。とにかく自動車は恐いもの一切なし、傍若無人きわまりない走り方だ。とりわけタクシーはすごい。例えるなら「将棋の飛車の成ったやつ」もしくは「チェスのクイーン」。はたまた目の覚めるような「桂馬飛び」。自由自在にどこでも停車し、転回し、発進する。日本の「カミカゼ・タクシー」も、フフホトやウランバートルの「モンゴル・タクシー」には到底かなうまい。歴史に「もし」は禁物だが、もしもフビライが日本を襲った時、船を使わずにタクシーを使っていたら…、今ごろ僕はモンゴル語で話していただろう。今回の旅にかぎっては、それも悪くないナ。

 ちなみにタクシーを見つけるのは簡単だ。市内を走るタクシーは非常に多いが、その色はすべて赤に統一されている。そしてそのどれもが通常の車の3倍以上の機動性で走り回っているのだ。まさに、赤い彗星。しかも、量産型。日本から来た白いモビルスーツは道路の真中で呆然と立ち尽くすほかなかった。

 後日、北京でめずらしく青いタクシーに乗ったが、フフホトを上回る交通量の中で、より強引に走り回る機動性はすごかった。すでに3週間で中国語がかなり分かるようになった私の天災的な耳には、運転手が誇らしげに言っていた言葉の意味がよーく分かった。「ザクとは違うのだよ、ザクとは」。

 


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嵯峨治彦
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