●チョクパパと出会う

 フフホト空港に着くと、チョックさんのお父さんがお付きの運転手と共に迎えに来てくれていた。やはりチョックさんに似ている。久しぶりの息子との対面で、お父さんは満面の笑みを浮かべているが、厳しい時代を生き延びてきた男らしい顔つきで、万が一怒らせたらすごくこわそうな感じだ。実際、後でチョックさんに聞いたところ、小さい頃のお父さんからのしつけは、それはもう恐ろしかったそうだ。

 チョクパパは内蒙古自治区で最初の修士号取得者で、学者として活躍していたこともあるそうだ。今は内蒙古大学の財務局長をしている。

 日本からやって来た息子の友人(僕)を見て、お父さんは「称好(ニィハオ)!」と挨拶してくれた。あれ?なんでモンゴル語で「サェンバェノー(こんにちは)」じゃないんだ?ここは中国の領土内とはいえ「内モンゴル」じゃないか、何より彼はモンゴル人じゃないか?

 でも、これは直ぐに自分なりに理解できた。初対面の外国人である僕に対して、対外的な言葉を使って、つまり公用語としての中国語を使って話してくれたのだ。トゥバ人のロシア語とか、トーホグ人の標準語とか(←自分)、マジョリティの中のマイノリティという立場でのこうした言葉の選択は、そのやるせなさも含めて、なんだかよく分かる気がするのだ。

 僕の方から「サェンバェノー!」と言うと、「おぉ、サェンバェノーは言えるのか」みたいに微笑んで、今度は「サェンバェノー!」と言って握手してくれた。


<チョックさんのお父さん>


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嵯峨治彦
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