12/3(日) 福島ツアー2日目 番外編

「ぽんの白布温泉リポート」

 この日、白布温泉西屋旅館の遠藤友紀雄さん・隆三さんご兄弟(嵯峨くんからお噂はかねがね)が、山形からわざわざ見に来てくださった。和やかな笑顔と威勢の良いさわやかな笑い声が実に素敵な方々である。現代怪奇談集「新・耳袋」や「エヴァンゲリオン」「トップをねらえ!」なるアニメ等のマニアックなネタですっかり嵯峨くんを感化してしまったお二人は、お会いしてみると共に若々しく、知的で穏やかな殿方たちであった。
 本郷第一小学校から白布温泉まで、車でほぼ2時間半の夜道をドライブ。しだいに民家が少なくなっていき、車窓の外の暗がりが冷気振動にさざなんでいる。峠を越えたあたりで、遠路はるばる迎えにに来ていただいたことをあらためて実感する。私的には8月(嵯峨くんの白布温泉リポートをご参考)に便乗しそびれて以来、遠藤ご兄弟の多大なるご厚意によって実現した念願の白布温泉である。期待もひとしおであった。
 到着してまず、おぉっとため息。さすがは開湯700年の歴史を持つ温泉旅館の老舗。内装が日本独特の古い家屋の美しさに満ち溢れている。赤茶系の格子戸が廊下を挟んで奥までずらりと向かい合っている様や、天井から下がる黄味を帯びた照明とは別に廊下の所々に置かれた行灯が、「むかしむかし」の民話を想起させる雰囲気を醸しだしている。部屋に入って、さらにおおぉと見入る。年季の入った姿見、障子、襖、こたつ、縁側には木工細工のすだれカーテン。なんとも、由緒ある温泉旅館の正しいたたずまいである。「こういうところのあるっていうことが、東北人として僕は嬉しいよ」と嵯峨くんは言ったが、てやんでぃ、私だって日本人として嬉しいもんね。それにしても、ああ本当に白布温泉だ。う〜ん、すっかりくつろぎモード。
 これもすべて、遠藤ご兄弟や嵯峨くんの人徳の相乗効果のなせる業である。、感謝感謝。・・・人徳って、自分にはなくても他人の持ってる分で、人生けっこうなんとかなるんじゃない?などとほくそえみながら、いそいそと夕食前の一風呂を浴びに行った。 
 お風呂場に行って、さらにおおおぉっと感動する。木目が視線を投げかけるような木戸に囲まれた廊下を渡ってこじんまりとした着替え場に入る。もうすでにこれまた年季の入った風情。黒いシンプルな湯舟には、熱くて成分豊かな温泉が惜しげもなく匂いもなく(そう、遠藤お兄さんから言われるまで、温泉=硫黄臭の公式を思いだせなかった)湧き出し続けている。一人きりで入っていることに多少の落ち着かなさを感じながら、久しぶりの温泉を堪能。夕食の時間が遅れることを気にしてのカラスの行水だったが、部屋に戻ると仲居さんから「早過ぎる」と驚かれて、失笑しながら嵯峨くんと顔を見合わせる。

 こたつの卓上に用意されたご馳走は、焼き物、鍋物、酢もの、煮物、土瓶蒸し、揚げ物、刺身、魚の甘露煮、柿を見たてた和菓子や数の子のつけ合わせ、漬物等など。盛り付けの心配り、色合いや味付けの上品さ、何より品数の多さに見とれることひとしきり。うおおおぉっと感激の嵐。食べても食べてもなくならない(ような気がした)。それでも、嵯峨くんと今日のパフォーマンスの反省をしたり、料理を誉めたりしてちゃかちゃか箸を口に運んでいるうちに、すっかりたいらげてしまった。
 食後、嵯峨くんと二人で、旅館フロントにあたる囲炉裏のある部屋にお邪魔して、炉端で遠藤ご兄弟と歓談する。「新・耳袋」の話が出ることを覚悟で、びくびくしながら(怖いの嫌い)会話に加わっていたが、喉歌やフォークソングの話に始まり遠藤家に関わる歴史的な人物のエピソード、エスペラントの話題まで、明るい笑い声の中終始楽しく過ごさせていただいた。(案の定怖い話しにまで及んだりもしたが、遠藤ご兄弟の接待はあくまで紳士的で引き際があざやかだったので、人見知りの激しい私もいつしかすっかり和んでしまっていたのであった)
 明日の出発も早いということで12時頃に部屋に戻る。あれこれ雑務を片付けて布団に入ったのが2時頃。せっかくだから朝風呂もと欲張って、6時半に布団から這い出ると、ひやりとする寒さが身にまといついた。
 ところで、朝ご飯がまた美味しかったのだ。焼き魚、めかぶ、具たくさんの汁物等など。特に、「ぜんざい付き」という点が私にはたまらないメニューであった。甘味の絶妙な汁餡の底に、まだ粒つぶの残る餅がちゃっかり(といった感じで)沈んでいるのである。素直に吠えた。「お〜い〜し〜い〜」。甘党ズ非党員の嵯峨くんの分も譲ってもらい(決して奪ったのではない)、ほくほくしながらこたつで朝食を済ませる。
 西屋旅館の皆々様にお世話になった感謝のご挨拶を済ませ出発する時には、とうとう振りだした粉雪が風に吹かれて、横殴りに白布温泉を覆い尽くしていた。遠藤お兄さんから、今年3月に火災で焼失した東屋さんと中屋さんの跡地の様子や再建工事着工の具合について説明していただいた後、あらためてまわりの景色を見渡す。ここには確かに北海道にはない古い歴史がある。東北に暮らす人達の思いを推し量りながら、大きな茅葺き屋根に雪降り積もる西屋旅館を後にした。

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