10月30日 いわき 「前夜のドラマ」
 さて今回も、のどうたの会事務局の「静かなるぽん」こと田中孝子が、交渉から旅の手配までやってくれた。(感謝)日程と予算の都合により、演奏日の前日に羽田経由で福島入りすることになった。小学校のある いわき市湯本は、これまた温泉街。佐藤さんに3つほど挙げてもらった候補の中から、朝食付きでのんびり出来そうなホテルを、ぽん田中が選んで予約してくれた。

 10月30日朝11:15のフライトで千歳空港を出発。前の晩に盛大にやった「ゆきあひ」北海道ツアーの打ち上げで、アルコールが多少残っている感じだ。→羽田→浜松町→上野→湯本と乗り継いで、湯本駅に着いたのは17:00ぐらいだったろうか。

 湯本駅でタクシーに乗りこみ、かばんからぽん田中謹製の旅程表を取り出して運転手に行き先を告げる。「ホテル・ハワイアンズまで。」、、、今朝、旅程表にざっと目を通した時は気がつかなかったが、こうして言葉にして初めて湧きあがる疑問。「何故ハワイなのか?」

 突然頭の中に、かなり小さな頃に見た印象的なTVコマーシャルの一つがフラッシュバックした。それは20数年前に(たぶん)東北一帯で放映されていたと思われる「ジョーバン・ハワイアン・センター」のCMだ。。。土俗的な太鼓の激しいビートをバックに、沢山の腰蓑の女性達がものすごい速さで腰を振りながら踊って近づいて来る。カメラは時々顔や腰のアップになる。と、突然、太鼓がブレイクして、ゆっくりしたリズムになる。すると腰も、それまでとは違う何とも言えないゆっくりした動きで左右にゆれる。当時小学生ながら、おぉ、と思う。すると直ぐまた元の激しいビートに戻り、腰もブンブン動き出して、たしか「常磐ハワイアンセンター」のナレーションが入り、ズームアウトしてCMは終わる。時間にしてわずか十数秒のCMだったと思うが、印象は非常に強かった。録音レベルを間違えたかのような割れかけた太鼓の音も、粒子の荒い映像も、そして女性の化粧と腰の動きのすごさも、二十数年を経た現在でも鮮明に記憶に残っている。もちろん、「ジョーバンってどこ?」、「なんでハワイなの?」といった、当時からの根本的な謎と共に。

 タクシーは夕闇の舞い下りる山間を進んで行く。ちらほらと温泉街らしい看板が続いている。その中に、赤と黄色のツートンカラーの背景に黒で「SPA RESORT HAWAIIANS」と書かれた看板も見えてきた。これから行くホテルのあるリゾートである。デザインは結構お洒落だったので、少しほっとする。「これから行く所は、あの腰ブンブンのハワイアンセンターではないんだ、シティ派のお洒落なホテルなんだ。」
 だが、ホテルに到着してロビーに進むなり、数々の疑問が沸き出してくる。「なぜ、見渡す限りハワイアン・グッヅなのか」、「なぜ宿泊客は、みなアロハシャツを着て歩いているのか」。。。クラクラする意識の中(←まじで)、心は以前「モンゴル・風の会」にタルバガン和歌山公演を主催して頂いた時のことを思い出していた。その時は宿泊場所として「ロイヤルパイン」という素晴らしいホテルを取って頂いた。(ありがとうございました)しかし「パイン」だからって、宿泊客がみなパイン星人(詳細不明)の格好をしなければいけないというわけではなかった。だが、ここではすべてがハワイだ。札幌から革ジャンを来ていった自分がひどく浮いてしまっているのを感じる。

 チェックインする頃には、頭の中は「もしや、もしや、、、」で渦巻いていたのだが、フロント係りの一言ですべてを悟った。「本日のポリネシアン・ダンス・ショーは○○時からでございます。」そうなのだ。実際にここは、わずか数年前に生まれ変わったばかりの新生常磐ハワイアンセンターに他ならないのだ。(驚くべきことに、この真実は、ホテル内の案内等には一切書かれていない。部屋に入ってモバイルでネットを検索して見つけたのだ。)

 未だに加速度系のアトラクションには目がない私だが、翌朝小学校での演奏を控えてたった一人でホテルに泊まる今回のような場合、ウォータースライダーだの、ダンスショーだの、リゾート気分のテンションにはさすがにちょっとついて行けない。部屋でTVを見ると、館内放送で施設紹介のビデオが流れていた。非常に良く出来ていて、都会から来た風の小綺麗な若い女性二人が、このリゾートのプールや温泉を笑顔で満喫している。ビデオには例のショーのシーンもあったが、小さい頃見たCMと違って、もう思いだせないぐらいの印象しか残らない、当たり障りない編集だった。
 「SPA RESORT HAWAIIANS」は自らの生い立ち〜温泉街の秘宝館的な怪しさを秘めた、テーマパークの草分け〜を必死で払拭しようとしているように見えた。結局、温泉街に「楽園ハワイ」を夢見ていた時代感覚は、今や恥ずかしい過去になってしまったのだろうか。

 部屋に置いてあった館内用アロハシャツは、とうとう袖を通す気にはなれず、20時過ぎにジーンズとTシャツで散歩に出た。先ずは温泉。なぜか江戸風の大露天風呂があって(これまた何故江戸?という疑問は残るが)とりあえず湯に浸かってのんびりできた。その後、各種プール、ウォータースライダーやダンス・ステージなどがひしめいている巨大なドームに足を運んだ。ドームの方は、ショーも終わっていたせいか人影はまばら。何組かの若いカップルがプールで遊んでいる。ダンス・ステージも照明が落ち、深い闇に沈み込んで見える。

 こうして、二十数年来ずっと心に引っかかっていたあの強烈なテレビCMの「ジョーバン・ハワイアン・センター」に、ひょんなことからたどり着いてしまったわけだが、謎が解けた爽快感はあまりなく、むしろ時代の流れを感じさせる何とも言えないうら寂しいような気分だけが残ってしまった。

2000年11月1日
のどうたの会 嵯峨治彦

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